日本山岳耐久レース(長谷川恒男カップ):持ちものノート
2006.10 三 竹
「ハセツネ」。ランニング大会との最大の違いは、補給の有無。途中で1箇所だけ水分をもらえるけれど、あとは全て自分で背負って徹夜で70キロを踏破します。長い道のり「何をどれ位持っていくか」は結構悩むところです。
このレポートは今回初出場するにあたって、オッティモメンバーで師匠の話や実走を通じいろいろ試行錯誤してためたノウハウを忘れないように残しておくためのものです。次に出ることを考えている人のイメージ作りに役立てば幸いです(それにしても金かかるぞ~)。
1.主催者から義務づけられる持ちものについて
主催者側は、競技ルールの中で次のとおり規定しています。
・ 月夜見山第2駐車場のみ主催者から水補給(水、スポーツドリンク合わせて計1.5ℓ)を行います。
・ レース参加者は、水2リットル以上、雨具、行動食、ヘッドランプ(予備アルカリ、リチウム電池、電球)防寒具を必要装備品として下さい。これらはスタート前の登録時に点検の対象になります。
まずは、これらについて一つづつ説明します。
① 水2リットル以上
水は月夜見駐車場にある第2チェックポイント(CP2:42㌔地点)まで補給できない。最低2ℓと言っても42キロの山道、エイドに慣れきったトライアスリートに2ℓでは全然足りない!登坂毎に水は欲しいし、暑いとき、乾燥しているとき、体調が悪いとき、傷口を洗うとき、ジェルや糧食を胃に押し込むときも水が必要。何より水が少なくなる(水袋が背中でピチャピチャ鳴りはじめる)と心理的に不安!自分はキャメルバックに3ℓ、スペシャル、予備水各0.5ℓと計4ℓ持ったが多すぎるという感じはしなかった。ただし持った分当然重くなるぞ~(最後あまったら水は捨てて走る。念のため)。暑い日は3.5ℓ位がいいかも。なお、容器はキャメルバックとかハイドラパックとか言われるチューブ付の水袋(凡そ4000円くらいする。アウトドアショップで売っている)をザックに格納して背負って走る。1.5~3ℓまで各種類あるが、迷うようなら大きいヤツを買っておけば間違いない。水はチューブから10分毎に少しづつ吸うが水袋は背中にあるので残量はまったく分からない。転んで破れたり、水漏れだってないとは限らない。そのため、お守りがわりに必ず予備の水ペットボトルを別に持ってゆく。
なお、気温の低いとき、体調の悪いとき水は直接胃に入れず、口に含んで暫く暖めてから飲むのがお腹への負担が少なくて良いらしい。自分はかまわずガブガブ飲んでたけど。
その他スポーツドリンクはお好み。これが効く、といった話は聞かない。濃い目のお茶はおいしい。
なお、自分はスペシャルドリンクとして、眠眠打破2本、アミノバイタル1袋、メダリスト1.5袋、TOP TEN1/3、塩、レモン果汁を炭酸抜きコーラで割った500mlを調合したものを持っていった。今回は疲労対策としてクエン酸系を少し多くした。不味いがこれはすごく効いてくれた。
② 雨具
今年は晴れたので使用せず。自分はコンビニで売ってるビニール製(300円)で間に合わす。モンベルやノースフェイスの撥水機能付のカッコいい高性能ウインドブレーカー(モンベル「ストームクルーザー」17000円は名品。ただし上のみ。上下だと30000円くらい)を登山用品店で売っている。400g以下と超軽量だが、財布も軽量化する。雨が予想される場合は上だけでもこだわった方がよいかも。
③ 行動食
山では携帯食料のことをこう呼ぶらしい。基本的にはトライアスロンやウルトラマラソンと同じでジェルとエネルギーバーが中心。開始後1~2時間後から、1時間おき位に補給する。18時間目標でジェルを8本、バーを4本持っていく(残りはおにぎりタイム)。POWER BARは気温が低いせいか硬くて噛み切れず、また飲み込むのに水を大量消費するのでダメ。ベスパプロがとても効くらしい(高いけど。一つ600円位)。POWER GELとCARBO SHOTZ(一つ300円位)はそこら中に袋の切れ端が捨ててあって選手のモラルの低さに閉口したけれど、それだけ使用率が高いことの証だろう。でもこれ10個持ってくだけでかなり重いぞ(10個でも1㎏近い)。ゴミは全部持って帰ろう。
あとの糧食は好みだが、自分は、お握り2個(赤飯とおこわ。もち米のほうが腹持ち良し。自分で大目に塩かけておけば完璧)、豆大福、蓬大福各1、みかん1個(スタート直前にもらった、レース中食べたがこれはおいしかった)、「ぐうぴたっ」(空腹感解消クッキー)3個、練り梅(チューブ)、ウイダーインエネルギーゼリー1個(水枯渇など非常時用、使用せず)、スニッカーズ小型6個入り(予備:使用せず)。休憩なしで登りのときなどに歩きながら食べるのが理想。長く休むと走れなくなる。
考えてみると、軽くてかさばらず、ゴミにならず、腹持ちが良く、塩分大目で高カロリー、美味とくるとなかなかいいものはない。甘いものばかりだといやになるので工夫したいところ。
サプリ系は塩、BCAA顆粒(アミノバイタルなど)、クエン酸(メダリストなど)、無水カフェイン(「エスタミンモカ」というのを薬屋で買える)、痙攣止め(「芍薬甘草湯」というのをネットで買える)、胃薬(使用せず)。特に塩分は大量の発汗があるため痙攣防止に必須。他にプロテイン摂取が筋肉にいいという人もいる。ブドウ糖もよいみたい。自分は15キロほどで早くも足(太もも)が攣り、塩と芍薬甘草湯は早々に使ってしまった。カフェインは言うまでもなく眠気対策、4時間おきに服用する。徹夜中の集中力維持には良いが、ドーピングの疑いもあり、というかそのものなので推奨しない。
④ヘッドライト
これは普通の人は初めて買うものだろう。炭鉱夫の使うようなごついのを想像していたけれど、今はおしゃれ、小型、軽量なのを売っている。PETZL, BLACK DIAMOND, PRINSTON TECという外国製品が席捲している。登山用品店で5000円くらいから10000円位(高え!)で売っている。LEDで長時間連続で使えるものを選びたい。今年は天気も良く、月夜だったのでそれほどの違いはなかったが、雨だった過去の大会では、光が乱反射し前の雨粒しかみえず大変だったらしい。
ライトは午後5時半には暗くなり、次の日の午前5時くらいまでは必要なので少なくとも12時間つけっぱなしになる。また、ヘッドライトは5、6メートル先の視界を確保するが、一方急坂や足場の悪い道は別に足元を照らす必要がある。(また、後続選手にマークされると後ろから照射され、自分の影で足元がみえなくなる)。すなわちライトは最低2つ必要。
ヘッドライトのほか、手に持って走る(手のひらに固定するバンドをつけ、手をつくことも出来る)、肩につける、腰につける、人によりいろいろ工夫をこらしていた。
自分は頭、胸(自転車用のトピークのLED超小型をリュックの胸固定ベルトに装着)、予備にハンドライト(使用せず)で走った。基本的にはこれで十分照らすことができた。
また、途中で電池が切れるので替えの電池も必須である。マンガン電池は禁止らしい。最近はリチウム電池というのが出ていて、軽さはアルカリの半分、寿命は2倍の優れものがある。これを8個持っていった。でも値段はアルカリの倍(AAA2本で800円、安売りでも600円)くらいした。
あと、注意点として、頭とその他のライトの電球の種類をあわせること。電池の種類をなるべくそろえること。真っ暗闇で交換するケースもありうるので何種類もあったら交換だけでも大変だ。繰り返すが使用済電池などゴミは持って帰ろう。替えの電球はLEDは殆ど必要なく、主催者もチェックしていなかった。個人的には今度は陸軍が使う暗視スコープを試してみたいところだ。
⑤ 防寒具
当日夜の外気温は8度。走っている分には問題ないが、休憩や足が止まるととたんに寒さを感じる。長袖のランニングシャツ位は持っていくか、上述のウインドブレーカーと組み合わせるなどして防寒に備えたい。中野さんの報告にもあったけれどコースでぶっ倒れる人が多い。万が一自分がそうなった場合に備えて暖かい服装も持っていくべきだろう。レースやめたらこれが本当の傍観具(寒。。。)。
2.その他当日の装備
・ 頭:バンダナ(頭保護、汗吸収用)、Princeton Tecのヘッドライト(イオス。5400円)。
・ 上半身:自転車のアンダーにバイクジャージ(少し大きめで腕回りのよいもの。バイクジャージはウルトラマラソンでもそうだが、保温性、速乾性、そしてバックポケットがすごく重宝する。ユニクロの高機能半袖ランシャツも消耗品感覚でつかえてよい。)、ザック:自転車用DeuterスーパーバイクLタイプ、キャメルバック(水袋)3ℓ。
・ 手:バイク用半きりグローブ(トレッキングポール使用の場合手のひらの皮剥け防止に必須。汗拭きとしても重宝する)。ポラールS720(心拍+高度計+ラップ)。バイク用アームウォーマー(夜寒くなってから着用)。
・ トレッキングポール:安物(5000円、300g)で間に合わす。20k以降全行程使用。
・ 下半身:CW-Xロングサポートタイツ(15000円くらい)。
・ 足:シューズはVASQUEのブラー(14000円)、5本足ソックスの上から靴下をもう一枚。足首上にスパッツ(3000円)着用。捻挫していたのでテーピングとサポーターで足首はガチガチに固定。
上記のうち、ザックはトレイルラン用の小さいものが、グレゴリー、モントレイル、モンベル、など山系のメーカーから出ている(10000円くらい)。自転車用のザックもそれなりに優れているが、やはり餅は餅屋。上記の製品は軽量(500g!)コンパクト(11ℓ)で、何より腰のベルト部分がメッシュバックになっていて行動食が入れられることが最大の利点(いちいちザックを降ろす手間が省ける)。今回オッティモ4人中3人がグレゴリーの名品「リアクター」(9000円くらい)を使用。でもこれ、作りがオタク過ぎて山レース以外使い道がない!ところで自分の場合はレース時の荷物は何やかんやで7キロ以上になってしまった。これって自分のロードバイク背負って走るのと同じじゃん!重い!なお、観音開きのジッパーは走ると知らないうちに全開になり中身が飛びでることがあるので両端を真上で合わせず端に寄せる、とめ具をつけるなどの工夫がいる。
その他、服装は、切り傷、転倒時の打撲に備えるため、なるべく露出部を少なくした方が無難(特に頭)。変にプロの真似してノースリーブ、短パンで出るのは危険。最後に地図は持ってた方が無難。
トレッキングポール(ストック)は、伸縮自在で最初はザックに格納しておく。登りや滑りやすい下りで(遅い人には)威力を発揮し、2本足より4本足の方が足への負担も小さい、といいことずくめだけれど、岩場では使えずかえって危険、途中渋滞するCP1までは使用禁止、スパート時は走るのに邪魔、なども留意点。登山店の人によれば、「使っている時間のほうが使わない時間より長いのであれば使った方がお得」、とのこと。なお軽量(200g)で高性能なのは20000円近くする。
足元はどんなスポーツでも同じだが、必ず自分にフィットする靴を選ぶこと。モントレイルのレオナデバイド(15000円)がかっこよくてはやっているが残念ながら自分には合わなかった。かかとがしっかりホールドできると同時に、ランニング用より大きく、少なくとも1センチくらいの隙間がつま先にあるものがいいらしい。靴下を2枚履くとクッション替わりになる。間違ってもランニング用で間に合わせようなどと思わず(滑りまくる!)、専門のトレイルシューズを購入しよう。
スパッツは、足首付近から靴にかぶせて靴の中に砂利や泥が入らないようにするカバーのようなもの。登山用品店で売っている。また、トレイルは岩や木の根などで走ると足をひねる(内転)ことが多い。捻挫防止のために足首へのテーピングは練習時からしておいたほうが安全。
3.感想
レースは最初の3キロと最後の1キロ街を走る他は全て尾根沿いの道で、最初の2時間は行列渋滞、その後の20~30kと、CP2通過後(45k:御前山)がもっとも辛いです。峠が途中にいくつかあり、リタイア時はそこから麓に下れますが、麓まで少なくとも1時間はかかるので、やめるのも大変!自分はレースの2週間前に捻挫して足がドラえもんのように腫れてしまったので、今回は無理せず完走という弱気な目標でした。そんなわけで完走はしたものの、燃え尽きたという充実感はなく、淡々とこなしてしまったのが残念です。レース中は、真夜中で登りは苦しいし、下りは危ないので、いかに集中力を持続させるかが大切だと思います。夜の切り立った道で滑って崖下に落ちてしまうひとも何人もいたそうです。トライアスリートは一般に持久力があるので、最初は調子が出なくてもだんだん力が出てきて後半に何百人とごぼう抜きする人が多いみたいです。
装備面では、事前にオッティモメンバーで何回か試走していたので、本番で特に困ったことはありませんでした。しいて言えば心拍計のセンサーが胸に食い込み少々気になったくらいで、思ったよりスムーズでした。来年は中野、永井のお2人をぶっちぎって恩返しします!
なお、事前にコースを知ることがペース配分および心理的にすごく重要なので、来年のレース出場を考えている人は事前に公式マップ(エントリー時に購入:1000円)を入手して入山することをお勧めします。オッティモでもまた練習会をやると思います。本番はもちろん、練習会も皆で相談しながら計画し、終わったら秘湯で休んで皆で御飯を食べながら反省会と一日中とても充実しています。山は食わず嫌いの人もいるかもしれませんが、来年も皆でこのレースを堪能しましょう。